久々に読み返しました。
たしか最初に書店で出会ったとき、
書名に惹かれて買ったと記憶していますが、
改めて読んでみて、やはり中上さんが詩に
つけるタイトルはどれも素敵だなあと思いました。
この本に収められている詩はいずれも、
一行一行ゆっくりと味わうように読まされて
しまいます。おおっ! と思わされる表現が
とても多く散りばめられているからかもしれません。
一編をいっきに読むという感じではなく、
その都度立ち止まって味わってしまうんですよね。
例えば
「たちまち岬のように後悔した」
なんて書かれてあると、そりゃ素通りできませんよね?
う〜ん、僕はこれまで岬のように後悔したことが
あっただろうか・・・? なんて。
また時折、異様に長い一行があったりして、
そうするとそこを息継ぎなしで音読してみたくなったり。
そんなこんなで薄手の詩集ではありますが、
実に濃い楽しみ方ができます。
個人的に特に好きな作品は、
「板切れに関する三つのパート」
「エルヴィスが死んだ日の夜」
「拝火教の神の名前を持った六十ワットの電球の下の六つの顔」
「父と母のいた正月」
「バーテンダーになりたかった」
「現場監督見習いをしたことがある」
です。
あと、表紙カバーの折り返しが絶妙な六角形で
深めに織り込んであって、なんだか素敵な
お着物を召してらっしゃるような詩集なんですよねえ。