「くじけないで」 柴田トヨ

「白寿の詩人」ということで
いま大変話題になっていますね。
98歳、柴田トヨさんの処女詩集です。


僕は、自分の作品が載った「詩とファンタジー(春夢号)」で、
たまたま柴田さんの特集が組まれていたことをきっかけに
彼女のことを知りました。


本を買って読んでみましたが、どの作品からも
白寿とは思われない若々しい感性が感じられ、
頭の下がる思いでした。
本当の若さというのは精神のありようのことを
いうんだなと教えられた気がします。


にやりと微笑んでしまう作品あり、
じわりと沁みわたる作品あり、
ほろりと涙のこぼれる作品あり・・・。


きっとこの本から勇気や元気を得るお年寄りの
方々がたくさんいらっしゃるのではないかと
思います。


「詩集は売れない」というのは定説ですが、
いやいや、この本は今やベストセラーです。
多くの人々に求められる詩集というのも
あるということではないでしょうか。
しかも、書かれた方は、これまで文芸誌などで
活躍されていた詩人ではなく、コツコツと
新聞に投稿されていた一般の方。


そんな風に、誰もが気軽に参加できて
誰もが多くの人に読んでもらうチャンスがある。
それが本来の詩というものの風通しの良さではないか
と個人的には思います。


この詩集から、僕は特に


「貯金」
「こおろぎ」


の二編に深い感銘を受けました。
また、巻末の「朝は必ずやってくる―私の軌跡」には
柴田さんのこれまでの人生が綴られていて、
それを読んだ後では、ひとつひとつの作品が
より深く胸に沁みわたります。


98歳のデビュー作。
第二詩集を心より期待致します。



くじけないで

くじけないで