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「わがひとに与ふる哀歌」 伊東静雄

伊東静雄さんの処女詩集にして代表作。
二十九歳で刊行されているというから驚きです。


描かれている情景は美しいのに、読み返すたび
ひりひりとした痛々しさばかりが伝わってきます。


その背景には、叶わぬ恋(しかも相当に残酷な)
があったからということなのですが、いわゆる
恋愛そのものを描いているわけではありません。
いわゆる「智恵子抄」的な恋の詩集ではない。
しかし、どの作品からも愛する者を得られずに
氷点下で懊悩する魂の孤独のようなものが
感じられてなりません。


僕は「冷たい場所で」と「わがひとに与ふる哀歌」
が特に好きなのですが、どちらも平常心では読めません。
心臓の奥が力んでしまいます。


苦悩はそのまま書けば苦悩です。
しかし、伊東静雄さんはそれを「哀歌」にします。
美しい歌へと昇華させます。
それこそ彼が真の詩人たる所以ではないでしょうか。


僕の好きな「わがひとに与ふる哀歌」の冒頭を
引用します。


 


太陽は美しく輝き
あるひは 太陽の美しく輝くこと希ひ
手をかたくくみあはせ
しづかに私たちは歩いて行つた
かく誘ふものの何であらうとも
私たちの内の
誘はるる清らかさを私は信ずる