第51回詩人会議新人賞を受賞しました

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「秋の匂い」という詩が第51回詩人会議新人賞を受賞致しました。

心より感謝申し上げます。

「詩人会議5月号」に作品と受賞コメントが掲載されていますが、

こちらのブログでも以下にご報告させていただきます。

どうもありがとうございました。

 

 

【受賞作】

 

 

   秋の匂い

 

バス停の錆びたベンチに腰かけて

通り越しの街路樹を見ていた

銀杏の葉たちはすっかり色づき

風の冷たさから身をまもるように

たがいに折りかさなっている

 

「おとなりいいですか?」

犬を連れた女が横にすわる

女は黄葉には興味のないようすで

うつむいたまま犬の頭を撫でている

「立派な犬ですね」

「ムサシっていうんです」

 

銀杏の葉が一枚

風にはこばれて足元に落ちる

ムサシは食べられるか確かめるように

ふぬふぬ鼻を近づけている

腹がへっているのかもしれない

 

湯気をまとった焼き栗売りが

リヤカーを曳いて通りかかると

女は目を伏せたまま

「あ、秋の匂い」とつぶやく

それでようやく気がついた

ムサシが盲導犬であることを

 

わたしは栗をひと袋もとめ

五つほど女の手に握らせる

女は礼を云うと器用に皮を剥き

指先でほぐしながらムサシにやる

犬も栗を食べるとはじめて知った

 

ふいに女は顔を前に向ける

つられて同じ方を見ると

ちょうど雲間から顔を出した落日が

銀杏の葉群れをすかしている

女はわたしより早くそれに気づき

ひとみにこがね色をたたえながら

まっすぐ光の方を見た

 

 

 

【受賞コメント】

 

 この度は歴史の深い名誉ある賞をいただき本当にありがとうございます。作品が自分の子どものようなものだとするならば、この賞は僕自身というよりも、「秋の匂い」という子どもがいただけたものと受け止めております。ですからご連絡をいただいたときには、我が子の頭を撫でながら「おまえ、良かったなあ」と声をかけてやった次第です。親としましては、子の独り立ちに勝る喜びはありません。と同時に、これからはこの恵まれた兄を超えられる弟や妹を生み育てていかなければと、一層身の引き締まる思いでおります。僕は自分の子どもたちをなるべく親しみやすい子に育てたいです。立派な子よりも人の気持ちに寄り添える子に。人気者よりも深く繋がりあえる親友を一人でも見つけられる子に。頼りない親ではありますが、そんな子を育て続けていけるよう精進してまいりたいと思います。 

 

  

※5月28日東京都江戸川区・ホテルシーサイド江戸川にて行われる受賞式に出席してまいりますので、その際にはまた改めてこちらのブログでもご報告させていただきたいと思います。