「女に」 谷川俊太郎

右ページに谷川俊太郎さんの詩、
左ページに佐野洋子さんの絵という構成の詩画集です。
これまでに何度も読んできた本ですが、
先日佐野洋子さんがお亡くなりになったことを記事で知り、
改めて読み返した次第です。


この詩集を手にするたび、僕はいつも
「幸せな本」と感じます。
それは、幸せなことが書かれてあるとか
お二方の幸せが表れているという意味ではなく、
この本の存在自体が幸せだという意味です。


谷川さんの詩があり、佐野さんの絵があり、
その背景にはお二方の愛があり、
それが本の中で見事に結実している。
まるでひとつの命が宿っているように思えるのです。
半透明のカバーがかけられ箱に収まっている
たたずまいも、さらに本の表情を幸せにしています。


ここには36編の短い詩が収められていますが、
僕はいつも、36連にわたる「女に」という一編の
詩を読むように味わっています。


ただ、あえて一つ一つの作品として見るならば、
僕が特好きなのは


「未生」
「会う」
「……」
「ここ」


人を愛する気持ちとして「未生」や「……」は
個人的に深い共感を覚えます。
「ここ」は有名な詩ですね。
また「会う」の中の
「私は少しずつあなたに会っていった」という
一節が僕はとても好きです。


この本の制作過程にまつわる興味深いエピソードが
『ぼくはこうやって詩を書いてきた』という
谷川さんのインタビュー集に載っています。
(これは700ページ以上にわたるかなり読み応えの
ある本でしたが、最近読み終えました)
併せて読むと、より味わい深くなると思います。


『女に』について、インタビュー集の中で山田馨さんが
「偕老同穴を求める若者たちのバイブルとして残っていく」
とおっしゃっていましたが、僕もその通りだと思います。
もちろん若者だけでなく、愛する人がいるすべての
人々にとって。


佐野洋子さんのご冥福を心よりお祈り致します。



女に―谷川俊太郎詩集

女に―谷川俊太郎詩集


ぼくはこうやって詩を書いてきた 谷川俊太郎、詩と人生を語る

ぼくはこうやって詩を書いてきた 谷川俊太郎、詩と人生を語る