「くどうなおこ詩集○」 工藤直子

童話作家で詩人の工藤直子さんの詩・散文詩・童話など
を集めた詞華集(アンソロジー)です。


基本的には子ども向けに書かれた作品群なのですが、
大人が読んでも胸に染みいる作品ばかりで、
溜め息をつかずには読めません。


有名な「てつがくのライオン」を筆頭に、最後の一編
まで見事な作品が並べられています。
どれもオススメなのですが、個人的にはなんといっても


「ぼくが密林一きれいな豹になった話」


という童話がしびれます。
本当に美しいお話です。
どうしたらこんな物語を紡ぎだせるのでしょうか。


もし僕に才能というものを授けていただけるとしたら、
難解で高度なレトリックを駆使した作品を書ける能力
なんかいらないから、くどうなおこさんのような
世界の見方ができる力が欲しいと常々思っています。


僕は、こういう作品を書ける人を一番尊敬します。
難しいことを難しく書くのなら、頭が良ければできます。
それよりも、読者に「こういうのなら、自分にも書けそうだな」
と思わせてしまうような作品。
それでいて、絶対誰にも真似できない作品。
そういうのを書くことが最も難しいと思うからです。
そして、そういう作品はきまって子どもたちの心を
動かします。


そういう作品を書ける方は、芥川賞作家や中原中也賞詩人
などよりも、はるかにはるかに稀有な存在です。
くどうなおこさん、まどみちおさん、やなせたかしさん、
谷川俊太郎さん・・・。
いずれも現役の方々で、僕にとっての北極星です。


「童話屋」より刊行されているこの本は、文庫サイズで
手軽に外に連れ出しながら読めるのもいいですね。
童話屋さんの詩集を今年はもっと手にとってみるつもりです。


余談ですが、工藤直子さんの息子さんって
漫画家の松本大洋さんなんですよね。
すごい親子だなあ。



くどうなおこ詩集○

くどうなおこ詩集○