「東京バラード、それから」 谷川俊太郎

谷川さんの新刊をさっそく読みました。四十年ほど前にかかれた連作詩「東京バラード」(『うつむく青年』所収)と現在とを写真と詩で繋ぐという新たな試みがされています。


いくつかの書き下ろしを除いては、既刊詩集に掲載済みの詩がシャッフルされ再掲載されています。だからほとんどは「持っている」詩なのですが、こうして再編集されるとやはり買ってしまいますね。例えば好きなミュージシャンのバラード集がリリースされると、全曲オリジナルアルバムで持っていてもつい手が伸びてしまうように。


それに、この本は谷川さん自身が撮影したモノクロ写真が詩と絶妙に絡み合っています。いずれも1950年代、60年代の東京を写したもので、当時の人々の生活の音や匂いまでが写真から沸きたってくるようです。そこに六十数年にわたって書かれた新旧の詩が順不同に並んでいるというのは、面白い試みだなあと感じました。


新しい詩も楽しみに待ち望んでいますが、こうして昔の作品をひとつのコンセプトにしたがって読むというのもいいものですね。


最後に「あとがき」にあった印象的な言葉をご紹介しておきます。


詩も写真も、物語と違って時間に沿って進むものではなく、むしろ時間を一瞬止めることで時間を超えようとするものなのかもしれません。