この詩集もずいぶん前から何度も読み返しています。長田さんの詩集の中でも特に好きな一冊です。
主に「死」を扱った作品群で、筆者の言葉を借りるならば「親しかったものの記憶にささげる詩」ということです。「碑銘を記し、死者を悼むことは、ふるくから世界のどこでだろうと、詩人の仕事のひとつだった」とも。
「死」を描くということは、必然的に「人生」について語ることになります。よって、僕はこの本を読むたびに「生」について考えずにはいられなくなるのです。
中でも僕が特に好きな詩は、なんといっても冒頭におかれた「渚を遠ざかってゆく人」。この一編だけでも何度も読み返してしまいます。「魂というものがあるなら」「箱の中の大事なもの」も好きな作品です。
それと、この本を読むと詩における句読点の使い方について考えさせられるんですよね。僕は基本的にあまり句読点は使わないので。なるほど、こんな風に句読点を生かした詩というのも面白いなあ・・・と感心させられてしまいます。
「死」というテーマ。これも、僕は自分で書くのが苦手で、今のところあまりすすんでテーマに用いてはいません。人生の大先輩たちが書かれた優れた作品群にとうていかなわないと腰が引けてしまうのです。
僕もこれまで様々な身内や知人を、さまざまな死因によって失っているので、むろん避けて通ることはできないテーマのひとつですし、自然と滲み出てくるとは思いますが、腰を据えて真っ向から挑む自信がないのです。
この書のあとがきに
「死について、そしてよい葡萄酒の一杯について書くのが詩」
という箴言が書かれていました。
だとするならば、僕もいずれはこの命題に真っ向から挑まなければならなくなるでしょう。己の体験を活かして描くことが決してかなわない「死」というものについて。
そのためにはひとまず「生」を燃やすよりほかありません。