川崎洋さんの詩の中から代表作や親しみやすい作品を集めた詞華集です。童話屋さんからは、こういう手に取りやすい選集がたくさん出ていていいですね。
こういう選集を取り上げて讃えると、詩の「通」の方からは「邪道だ」と言われてしまうかもしれません。ビートルズのベスト盤だけ聴いて、「ビートルズ最高」と言ってる人みたいに思われて。でも、いいじゃないですか。選集には選集の良さがあります。ビートルズだって赤盤や青盤は、「アビーロード」の良さとは違った楽しみ方ができるものですよね?
個人的に好きな詩もたくさん載っています。
「ほほえみ」
「海で」
「小さなリリーに」
「愛の定義」
「こもりうた」
など。
川崎さんの詩にはときどき、実体験や実際の見聞そのままを書いているのだろうか?と思わされる詩があります。
痛快なオチがある「海で」にしても、「しかられた神様」や「わが愛するチャップリン」にしても「花」「言葉」「ちちんぷいぷい」にしても。
それが「事実」なのかどうかははっきりしませんが、仮に事実だとすれば、それを詩にしてしまうことがすごいですし、事実でないならば、それをあたかも事実のように語ることがすごいです。(「編者あとがき」で「海で」が実体験であることだけは明かされていますが)いずれにせよ、リアルにその場面が浮かんできます。
最後に、この本の中から「詩は たぶん」という作品を引用したいと思います。僕は基本的にこのブログでは、詩の引用は必要最低限に抑えようと思っているのですが(本で読んでほしいから)この一篇は、詩を読む方、書く方にぜひご紹介したいので、失礼して・・・。
「詩は たぶん」
詩は たぶん
弱者の味方
ためらう心のささえ
屈折した思いの出口
不完全な存在である人間に
やさしくうなずくもの
たぶん
僕はこの詩に大きくうなずきます。最後の「たぶん」にいちばん。