阪田寛夫さんの詩の中から親しみやすい作品を集めた一冊です。
阪田さんは小説で芥川賞や川端康成文学賞を受賞されている一方で、童謡「サッちゃん」「おなかのへるうた」などを作詞したり教科書に載るような詩篇を書かれていたり、実に幅広い創作活動をされていて本当にすごいなあと敬服します。
文学性の高い小説を書ける方はまれであり、子どもも親しめる童謡や詩を書ける方はさらにまれであるのに、一人でその両方をやってのけてしまうのですから。そして、僕はそういう方の書かれた「子ども向けの作品」というのがとても好きです。そういう作品は大人が読んでもドキリとさせられます。
この本に掲載されているのは、そんな風に子どもにもわかるように書かれてあるやさしい詩篇たち。
色々な本で「練習問題」という詩が取り上げられていることが多く、有名な作品だと思うのですが、僕はこの詩はあまりピンと来なくて、むしろ以下の詩に惹かれるものがあります。
「おなじ夕方」
「ねこをかうきそく」
「葉月」
「木の葉聖書」
「ねむりのくに」
特に子どもの視点になって書かれてある「おなじ夕方」が好きで、こういう感覚を表現できる方は阪田さんの他にいないのではないかと思います。
「ねこをかうきそく」のユーモアセンスには笑みこぼれ、「葉月」のイジイジっぷりに大阪弁が絡みつく感じも絶妙です。
もちろん誰もが知る「サッちゃん」も掲載されています。余談ですが、「サッちゃん」はエッセイストでタレントの阿川佐和子さんがモデルという話もあるそうですね。実際、阪田さんと阿川さんは幼馴染だったそうです。