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「レモンとねずみ」 石垣りん

石垣さんの遺品の中から見つかった約350編の詩の中から
40編を選出した詞華集です。


石垣さんは生前四冊の詩集を刊行されていますが、
亡くなる直前に「五冊目の詩集を作りたい」と願われていたそうです。
この本はその願いを託された編者の方がまとめたもので、
事実上の第五詩集ということになるでしょう。


未刊詩集とはいえ、その多くは新聞や雑誌で発表されていたもので、
どの作品も石垣さんの息吹が感じられるものばかりです。


僕が特に好きな詩編は


「レモンとねずみ」
「恋人」
「なのはな」
「なかよし」
「ゆりかごのうた」
「鍋のスープ」
「ゆたんぽ」
「いじわるの詩」
「私の日記」


など。いずれもシンプルで分かりやすく
胸に染み入る詩ばかりです。
中でも「ゆたんぽ」と「私の日記」は一読して
思わず言葉に詰まります。


茨木のり子さんが次のようにご指摘されています。
「詩の世界でも、現代詩の潮流とは無縁で、
むしろ、まったく逸れたところで御自分の詩を
書き継いでこられました」
その通りで、このようなスタンスを貫かれる方というのは
現代において非常にまれな存在です。


石垣さんの詩集では『表札など』が最も素晴らしいことは、
多くの方が認めるところでしょうし僕もそう思いますが、
(『表札など』については以前このブログにも書きました)
個人的にこの詩集は二番目に好きです。
巻末には谷川俊太郎さんと茨木のり子さんの弔辞も
掲載されていて、それがまた読みどころでもあります。


石垣さんの詩は、常に「生活」と密な関係にあり、
そこが好きなところでもあります。
詩人にとって最も必要なことは、高い学歴でもなく
難しい思想やレトリックをこねくりまわすことでもなく、
まず何よりも「生活者」であること。
日々の生活を丁寧に見つめていくことなんだと
気付かせてくれます。


レモンとねずみ (童話屋の詩文庫)

レモンとねずみ (童話屋の詩文庫)