「自分の感受性くらい」 茨木のり子

学生の頃、この詩集の表題作「自分の感受性くらい」を読んでボロボロと涙をこぼしたことがあります。


まるで自分のことを見透かされたような、自分の中のずるい部分を言い当てられたような、そんな気持ちになり、戒められました。そして、その体験は僕にとって幸福なものだったと思っています。


この作品が孕んでいるある種の「厳しさ」は、「優しさ」に裏打ちされている気がしてなりません。こういうことを言ってくれる人こそが、真に優しい人なのではないかと。


今でも気持ちが弱くなるとこの詩を読み返します。(因みに僕はこの詩の影響で、様々な作品に触れて感動したり、様々な出来事に感じ入ったりすることを「水やり」と呼んでいます)


そんなわけで、この詩は僕の中で最も馴染みの深い作品のひとつです。茨木のり子さんは、79歳で亡くなられましたが、人間の本質を見事に描いたこの作品は、この先百年、いや千年も枯れることなく読み継がれていくのではないでしょうか。


もちろん、この詩集の他の詩篇も大好きです。女性独特のしなやかさがあると同時に、ときにドキッとさせられる鋭さも秘めているのが、茨木さんの詩の魅力ではないかと個人的には思います。


それと20編でまとめ上げられたこの詩集は、文字のサイズ・行間・空白などが、紙面においてなかなか贅沢に使われていて、そこがまたいいんですよね。こういう詩集を作って、長く人々に愛されたらさぞかし詩人冥利に尽きるだろうなと。


一言でいうと、僕にとって「憧れの詩集」です。