僕は、この詩集のように口語調で生活感がありありと感じられるような作品というのがとても好きです。(木島始さんの訳の力も大きいと思います)
ラングストン・ヒューズさんの詩を読んでいると、当時の黒人の生活が胸に沁みわたります。
しかし、作品から伝わってくるのは不思議と「怒り」とか「訴え」といったものではないんですね。まして「卑屈さ」など微塵も感じられない。
そこにあるのは、ユーモアだったり、ウィットだったりなぜか明るさを感じさせるものなのです。
「差別」という過酷な現実を生きながらも、彼らの奥底には、何ものも根絶やしにすることのできない「明るさ」があるのではないか。苦しいときにただ「苦しい」と詠うのではなく、それを茶化したり、芸にしたりしてしまう。それこそが黒人が優れた文化を生み出し続けた要因ではないか・・・。これは彼の詩に限らず、僕が黒人の文学や音楽に触れるたびに思うことの一つです。
そして、僕はラングストン・ヒューズさんのような表現者をとてもカッコいいと感じるのです。
それを象徴的するような「助言」という短い一編を引用します。
みんな、云っとくがな、
生まれるってな、つらいし
死ぬってな、みすぼらしいよ
んだから、掴まえろよ
ちっとばかし 愛するってのを
その間にな。